大量生産から必要なものを必要なだけの社会に、日本人の持つ「もったいない」はSDGsの原点です。長年放置された森林資源を有効活用し長く使える家具へと変身させる事で無駄な環境負荷を軽減し活きた森へと再生させたい。そんな単純な事なのですが、今はまだとても難しい事なんです。そんな難題に対して地元の仲間が手を取り合って挑戦する地域と環境の未来を考えたプロジェクトです。
代表 大谷 展弘
人間の経済活動とトレードオフで地球には大きな負荷がかかっております。地球の平均気温が2度上昇すると年間平均気温が-1度のラインでは平均気温が1度となり氷は融解してしまいます。また海水温の上昇に伴う台風の近海発生と大型・強力化や、漁場の変異や不漁など、私たちの生活に様々なかたちで大きな影響をおよぼしています。衛星写真で地球を見てみると年々減りつつある森林の現実。見て感じたその気持ち、いま私たちの住む美しい地球に対してこれからできる事は何なのか。それがスタートです。
私の住むいすみ市は千葉県の南東部にあり太平洋に面し夷隅川や田園に囲まれ温暖で人々も穏やかな里山エリアです。近年では移住したい田舎ランキング6年連続首位となるなど、東京から車で80分の気軽に来れる自然豊かな地域です。また、地域的に平野と丘陵地の境にあたり小高い丘程度の山にも囲まれ杉も多くありますが、ほとんどの山で手入れはされておらず荒れる一方です。2019年の台風では杉の倒木による大規模な停電や通行止めなど社会インフラにも多大な影響を及ぼしております。しかし、伐採したくとも地域に林業者はほとんどおらず伐採はじめ処分など多額の費用がかかるため所有者のほとんどの方にとっても大きくなったスギの扱いが地域的な社会問題となっております。
杉の有効活用と木材循環型社会の実現へ向け連携する事で、地域で頑張る各分野のスペシャリストが活躍し地域自体が輝き活性化する事も目指しております。また想いや理想を具現化する事で、言葉だけでは伝わらない本物の持つ存在感や質感、温もり、心地よさなど実際に触れ体感する事で感じる事が次の輪への繋がりとなると信じ形にします。そして木を扱う者としての責任と、ほんの少しでも地球環境改善へ貢献しつつ、次世代へのより良い環境のバトンタッチができるよう活動を進めてまいります。
地域で頑張る各企業の強みを活かした連携を行う事で、例えば不要で放置された杉丸太を回収・指定規格に製材・飛騨産業へ運送、製作加工など各専門の企業が分担することで新たな経済活動を起こします。またプロジェクトが進むにつれ様々な問題が起こりますが、その都度各分野のスペシャリストが経験と実績から最適な解決方法を見つけ対応する事で様々な問題を解決しております。そして、これらの連携を「いすみモデル」のひとつとして活動してまいります。
放置された杉
回収作業
製材・運送
圧縮加工
杉には軽い、温かみがある、木目が真っ直ぐで美しい、日本国内で広範囲にあるなどの特徴がありますが、柔らかい点は強度が必要な家具にとっては短所でした。しかし、圧縮技術により、35~50%圧縮する事で柔らかいというデメリットを克服し、家具に適した“硬い”杉材となり多様な使い道が広がります。
千葉県では今、台風による倒木や需要の減少により荒廃したスギ林が地域問題となっています。今まではその特性から主に建材としての利用されていましたが、近年は安い輸入材に押されその需要も減少し山林が手入れされる機会や人材も少なくなってきています。また2019年の台風15号では倒木による広範囲での長期停電の被害が出たり世界規模では森林伐採による温暖化や干ばつ・大規模森林火災のニュースを目にする機会も増えてきています。そのような社会環境の中で、少しでも環境や地域の問題解決とならないかと地元の商工会で繋がった各分野の企業や専門家などと共に「森の再生」をテーマに開発しました。また重要な技術となるプレス圧縮・曲げ木加工は弊社と繋がりのある飛騨産業株式会社(岐阜県高山市)にご協力いただき製品開発をしております。 また本プロジェクトでは、試作にあたり材を提供してくださった方からはご先祖様が何かに使えるだろうと植えた杉がこの様に使われるならきっと喜んでくれているでしょうと温かいお言葉も頂き、このプロジェクトは森の再生だけでなく祖先の思いとこれからの子供たちを繋げるひとつの形でもあると気づかされました。
Daimaru Furniture